あらあら皆様ごきげんよう!
甘楽さんがいらっしゃらないようなので、私、狂がかわりに更新させて頂きますわ。
と言いましても、この私の口から語れることなど然程多くはありません。
先ほどまでの話題は、平和島静雄さんの人間性についてでしたわよね。
それなら興味深い資料を見つけましたの。
興味のある方は、下のテキストファイルをご覧下さいな。
●テキストファイル 4月1日午前10時35分更新
「よう、ノミ蟲。ついにゴミ溜めを住処に替えたのか? まぁ手前にはそれがお似合いだわな」
「…シズちゃん、こんなところで会いたくはなかったよ」
臨也は、手を挙げると小さく振って見せた。
朝の路地裏。静雄の言葉通り、臨也の体は収集前のゴミ袋の山の中に埋まっている。
今日は火曜日だから、不燃ゴミの収集日だ。
臨也は、可燃ごみの収集日でなくてよかったと心から感謝した。生ゴミまみれになることだけは、いくら自分でも御免蒙りたい。
「で、ノミ蟲君はよぉ、一体どうしたんだ? さっきからピクリともしねぇじゃねぇか。俺に殺されるのを大人しく待ってるってわけか。愁傷な心がけだな? ああん?」
「いや、俺も別に好きでこうしているわけじゃないんだよ。ただ動きたくても動けない事情があるんだ。それから君に殺されるのはできれば遠慮したいな」
「ああ? 事情だぁ?」
「うん。誰かに一服もられたのかなぁ。どうも体が熱くて動けないんだよねぇ」
そう言いながら臨也は唇をなめた。チラリと覗く舌が、やけに赤くて官能的だ。
よく見れば、臨也の目は潤み、頬も紅潮しているようだ。熱に浮かされたようなその顔には、不思議な色気が漂っている。
思わずゴクリとなった喉を誤魔化すかのように、静雄は一つ咳払いをした。
「あー、何か殺る気が失せたわ。今日は見逃してやるから、さっさと俺の前から姿を消せ。5秒以内に」
「5秒以内って随分無茶なこと言うよねぇ。だから俺は今動けないんだってば」
そう言い終えると、何を思ったのか臨也は天を仰いだ。
そして、静雄に視線を戻すとニヤリと笑う。
「ねぇ、シズちゃん。俺とイイことしない?」
「ああ? イイことって何だよ?」
「全部俺に言わせるつもり? 言わなくたって分かるだろ。あ、シズちゃんってひょっとして経験ないの?」
「…おい」
「それならさ。俺がとびきりいい思いさせてやるから」
臨也が誘うように手を挙げた。
白く細い手が、静雄に向かっておいでおいでをする。ゆらりゆらりと振れるその手を見ていると、不思議と心が凪いで行く。
静雄はその手につられるようにして、臨也の元へと引き寄せられた。
「ねぇ、頼むよ。さっきから体が火照って仕方がないんだ」
臨也は静雄の手を引くと、思い切り自分の方へと引き寄せた。
静雄は、思わず臨也の上に倒れこむ。二人でゴミ袋の山の中に埋もれる様は滑稽だが、不思議と起き上がろうと言う気にはならなかった。
熱があるというのは本当だったのだろう。
臨也と密着している肌が、ひどく熱い。だが、その熱が今は不思議と心地よい。
「後悔しても知らねぇぞ」
「しないよ。後悔なんて」
囁くように言い合うと、二つの影はやがて一つになった。