大変遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます!
年が明けたらすぐにご挨拶するつもりだったのに、仕事が思ったよりも忙しくて大遅刻してしまいました。
そして、今日は待ちにまったデュラララのアニメ放送日ですね!
本当に心待ちにしてました。でも家では映らないという…。
いいもん、バンダイチャンネルという心強い味方がいるもん。
……orz
ああ、切実に池袋に引っ越したいです。
まぁ、無理なんだけどね!
(以下でちょっとだけ、新刊とペーパーのネタバレがあります。ご注意ください)
でもデュラララの新刊はちゃんと今日ゲットしてきました。
ペーパーをもらうために、アニメメイトまで遠出して。本当は4種類全部そろえたかったんだけど、単行本は一応そろっているので、貧乏根性が働いて1種類だけもらってきました。
もちろん静雄と臨也のペーパーです。
ああ、この2人って喧嘩するだけで何でこんなに萌えるんだろう。
それに狩沢姉さんの妄想が毎回毎回ツボをついてるわぁ。
もう狩沢姉さんをお師匠さまとお呼びしたいです。
そして、肝心な新刊のほうは…まだ読んでません。
だって、読んだら最後、中編の連載が書けなくなりそうなんだもの。
でも読みたいという欲求と戦うのがしんどすぎるっ!
さっき我慢しきれずに、ちょっとだけ読んでしまったのですが、いきなり臨也が出てきてテンションがあがり、そのまま単行本を閉じました。
やばい、臨也さんは最悪×7に出てこないかと思っていただけに、出てきただけでもう大喜びです。
静雄さんも出てくるといいな!
でも、このまま読み進めてしまったら、中編のほうを抹消したくなりそうな気がするので、がまんがまん…。
…我慢、できるかなぁ。
中編のほうは、あと2話で終わる予定です。
何だかもう当初の予定を見失っていますが、終わると思います。
そうしたら、今度は存在意義が分からなくなりつつある長編の続きを書くんだぜ!
そして、今日新刊と一緒に、デュララジのCDのほうもゲットしてきたので、今から聞きます。
新刊にCDに(見れないけど)アニメがあるなんて今日はなんていい日なんだろう!
今日に限らず、これから楽しみがいっぱいですね。
こんなデュライヤーを皆様と過ごすことができて幸せです!
それでは本年もどうぞよろしくお願いします。
§ 路地裏某居酒屋
「なぁ、セルティ。俺からさ、力をとったら一体何が残ると思う?」
静雄は、手酌でビールを注ぐと一気にあおった。
静雄の手元では、既に4~5本のビール瓶が空になっている。静雄は決して酒に弱いわけではない。しかし、好き好んで一人で大酒を飲むタイプでもなかった。
その静雄が今日は、かなりの量を飲み進めている。これはかなり珍しい光景だ。
セルティはそれを止めるでもなく、先ほどからただじっと見つめていた。
「俺はよ、この間初めて自分の力を認めることができたんだ。それなのに、最近は力を使おうという気がおきない。おかしいよな、自分でもびっくりするほど怒りの感情がわいてこねーんだ」
そう言うと、静雄は居酒屋のカウンターに突っ伏した。
ここは人通りから少し離れた場所にある居酒屋で、サラリーマンの帰宅ラッシュの時間帯であるにもかかわらず、静雄たちの周りに客は数人しかいない。
この居酒屋に静雄を呼び出したのはセルティだった。
セルティがこうして静雄を呼び出すことは珍しい。いつもならば、静雄のほうからセルティを呼び出して、己の悩みを相談する。
しかし、今回ばかりは少し事情が異なった。というのも、セルティは静雄の上司である田中トムに頼まれて、静雄を飲みに誘ったのだ。
まず田中トムは、最近静雄の様子がおかしいから少し様子を見てくれないかと、先の事件で知り合ったばかりの新羅に相談した。しかし、新羅は自分には荷が重過ぎると匙を投げて、セルティにお鉢が回ってきたというわけだ。
しかし、静雄はそんな裏の事情まで知るわけもない。
この居酒屋に着くや否や、セルティに仕事の愚痴を始めた。はじめは、取り立て先に対する軽い愚痴などだった。
しかし話が進むにつれて、目に見えて静雄は落ち込み始めた。静雄は、自分でも最近の不調の原因は分かっている。普段では抑制できないほど沸いてくるはずの怒りの感情が全く沸いてこずに、取立てがうまくいかないのだ。
基本的に、静雄はそんなに屈強そうには見えない。それなので、力を使わなければ静雄はただの優男だ。だから、最近の客は静雄を見ても何ら怖がらなかった。それどころか、こんな兄ちゃんが取立てをできんのかと言い出すヤツまで出てくる始末だ。
それでも、不思議と静雄には怒りの感情がわかなかった。そして客に対して暴力を振るう気にもなれない。
「仕事だって分かってはいるんだ。でも暴力を使う気にはならねぇ。かと言って怒りの感情も湧いてこねぇし、何か全てのことがどうでもよくて、関心がもてねーんだよ…」
『何か気がかりなことがあるから、他のことに関心がもてないんじゃないのか?』
それまでずっと黙って話を聞いていたセルティが初めてした指摘に、静雄はギクリとした。
確かに静雄には、ずっと気にかかって頭から離れないことがある。
それは、臨也のことだった。
あの日、静雄は逃げるようにして病院を後にし、東京へと帰ってきた。
それから静雄は、一度も臨也の元を訪れていない。その後、新羅から臨也の命に別状はないと伝え聞いたものの、静雄はどういうリアクションをとればいいのか分からなかった。
今まで臨也を殺すと明言してきた自分が、果たして臨也の無事をよろこんでいいのか。
いや、そもそも喜ぶと言う選択肢が頭に浮かぶこと自体が異常なのだ。犬猿の仲の人間が助かったからと言って喜ぶ人間など普通はいない。
――どう考えたっておかしいだろ。臨也の野郎がくたばろうが、別にどうでもいいじゃねーか。でも…。
病院で見た臨也の生気のない顔を思い出す度に、静雄の身に経験したことのない震えが走る。
病院にいたときは感情の整理がつかなかったが、今なら確かにわかる。
これは――恐怖だ。
臨也の死を想像し、恐怖に震える自分が、そこにはいた。
そうして気づけば、静雄は1日中臨也のことを考えてばかりいる。
「なぁ、セルティ。一人のヤツが気になって仕方がなくて、ほかの事に構っていられねえなんてことは今まであったか?」
『……?』
「頭の中からそいつのことが離れねーんだ。寝ても覚めても、気づけばそいつのことばかり考えてる」
突然の質問に面食らったように、セルティは静雄を見つめていたが、暫くすると小さく頷いた。
『あるぞ』
「本当か?」
『ああ』
「なら聞きたいんだけどよ、どうすればそいつのことを考えずにすむんだ」
『それは、無理だ。私もあいつのことが頭から離れない』
「あいつって…」
『新羅のことだ』
きっぱりと言い切ったセルティに、静雄は目を瞬かせた。
静雄は、新羅とセルティが一緒に住んでいるということは知っている。そして、二人が恋仲であるらしいということも薄々は感づいていた。
しかし、セルティが静雄に対し自ら進んで新羅の話題を出すのは、これが初めてだった。
『今だってそうだ。新羅が今頃何をやっているのか気になるし、夕飯は何を食べたのか気にかかる。あいつの今日の仕事がうまくいったのか、あいつが何かに心を悩ませていないか心配だ』
静雄に向けられたPDAの上で、ゆっくりと文字が送られていく。
セルティは声を発することができないし、その表情だって分からない。
それでもセルティが発する文字からは、とても穏やかな空気が感じられた。
「何だかあいつの母親みてぇだな」
『だが綺麗な感情ばかりじゃないぞ。新羅から知らない女の話が出れば、自分でもびっくりするほどどす黒い感情が湧いてくる。もし新羅が浮気なんてしたのなら、私はもう立ち直れないかもしれない』
「……」
『私は人間じゃないのに、人間の女にやきもちを焼くなんておかしいと思うだろ。でもこの感情を自分でもうまくコントロールすることができないんだ。いつだって新羅のことが頭から離れない。静雄だってそうじゃないのか?』
セルティに尋ねられ、静雄は暫く考えてみたが、首を振る。
「違うと思う。俺はあいつのことが吐き気がするくらい嫌いなんだから」
『嫌いな人間のことが気にかかるのか?』
「気にかかるっつーか。そうだな、安否が気にかかるみてぇなもんだ」
セルティが、動きを止め、まじまじと静雄を見つめた。
そのセルティの反応に、静雄は自らの失言を悟る。今安否が案ぜられるような状態にあり、静雄が吐き気がするほど嫌いな人物。そんな人間は、たった一人しかいない。
セルティだって、きっと気がついただろう。そんな静雄の推測を裏付けるかのように、セルティが話題を変えた。
『そういえば、臨也は一命を取り留めたそうだな』
「……」
『でもまだ意識は取り戻していないらしい。新羅が昨日見舞いに行ったそうだが、それでも大分快方に向かっているそうだ』
「…新羅は、東北まで行ったのか。ノミ蟲のために、わざわざご苦労なことだな」
『いや、臨也は都内の病院に転院したぞ。どうやら新羅の親父さんが根回しをしたらしい』
これは初耳だった。
静雄は、あの日臨也から逃げるように、東京へと戻ってきた。それなのに、その臨也が今また静雄の側にいる。その事実は静雄を俄かに動揺させた。
――東北で見た臨也の青ざめた顔。
そして、首を絞めたときに手に感じた体温まで、静雄はリアルに思い出すことができる。
あの抜け殻のような臨也が今、静雄のすぐ近くにいるのだ。
それを理解した瞬間、静雄は猛烈に逃げ出したい衝動に駆られた。
一体何から逃げ、そしてどこへ逃げればいいのかは分からない。だが今、臨也の側にはいたくなかった。
「あいつ、都内にいるのか」
『ああ。……お前、一体どうしたんだ?』
静雄の様子がおかしいことに気がついたのだろう。セルティが、怪訝な様子で尋ねる。
セルティに心配をかけることは分かったが、静雄は自分の動揺を隠すこともできない。
正直、もう限界だった。静雄は自分でも整理のつかない気持ちを、吐き出すようにしてしゃべりだす。
「なぁ、セルティ。俺はこの前からおかしいんだ。自分で自分のことが分からねぇ。知ってるだろ? 俺は、今まで臨也のことが憎くて、殺したくてたまらなかった。それなのに、いざあいつが死にそうだってなったら、あいつが死ぬのが怖くなった」
『想像と現実とは違う。いくら嫌いな人間だって、そう簡単に人の死を望めるはずがないさ』
「そんなんじゃねーんだ。俺は今まで何人か人間が死ぬのを見てきた。でも、そいつらの死と臨也の死は決定的に違う」
『どう違うんだ?』
「……俺は、他の誰よりも臨也が死ぬのが一番怖い」
その場に、沈黙が落ちた。セルティは、何と言えばいいのか言葉を探しているようだった。
二人で黙ると、俄かに周りの人間の話し声が耳につき始める。
そうして、ここが居酒屋の店内だったということを思い出した。
「でもよ、他の誰よりも俺は臨也のことが嫌いなんだ。俺はあいつの顔を見るだけで腹が立つし、あいつのすることなすこと全てが気に食わねぇ。それでももし俺の前からあいつが姿を消したらと考えると、身震いがする」
『……』
「あいつが好き勝手やっていることは、気に食わねぇけどまだ許せる。でも今回のように、俺以外の人間があいつにちょっかいをかけることは絶対に許せねぇ。俺は臨也が死ぬのが怖い。でも百歩譲って、あいつが死ぬときが来るとしたら、それは俺の手でないと駄目なんだ」
暫くの間、静雄は思うがままに自らの気持ちを吐露し続けた。
話の前後も繋がっておらず、言葉だって無茶苦茶だったが、そうして話すことによって少しずつ自分の気持ちが整理されていくような気がした。
セルティは、そんな静雄の話をただ静かに聞いていた。
そして、静雄の話の一つ一つに丁寧に相槌を打つ。
やがて、静雄は長い話を終えた。
静雄が口を閉じたことにより、その場に沈黙が落ちる。
セルティは何かを考えていたようだったが、やがて小さく一つ頷いた。
そしてPDAに一文を打ち込み、静雄の前へと差し出す。
『お前は、臨也のことが好きなんだな』
――好き
それは意外な言葉だった。他の誰かが言ったのなら、静雄は一笑に付してとりあわなかっただろう。
だが、目の前にいる友人が言うと、頭ごなしに否定するでもなくすんなりと聞くことができた。
それは、静雄がセルティには心を許しているからなのかもしれない。
「好き…」
静雄は口の中で小さく呟く。
そうして声に出すと、その言葉は、なぜかストンと静雄の心に落ちてきた。
――ああ、ひょっとして好き…なのか
静雄は、臨也のことを嫌いだと思いこそすれども、好きだとは1回も思ったことがない。
だが、それは誰かを好きだと思う感情が、静雄の中で欠如していたからではないだろうか。
自らの力をもてあまし、相手を傷つけるかもしれないという恐怖が、今まで静雄の感情を抑圧していた。しかし、自らの力を認めることができた今、感情を抑圧するものは何もない。
それゆえに、「好き」という感情を、静雄は今なら受け止めることができる。
その感情が向けられる相手が臨也だということは、少し意外な気もするが、それでも何か納得することができた。
今まで臨也以上に、静雄の感情を揺さぶった人間もいなければ、臨也以上に静雄が執着した人間もいないのだ。
「好き」という言葉一つで、今までわけがわからずあちこちに暴走していた感情が一つの場所に収束していくのが分かる。
「俺は、臨也のことが好きなのか」
『それはお前が決めることだ。でもとても臨也のことを好いているように、私には見える』
「俺は誰よりも臨也のことが嫌いだ」
『ああ』
「臨也の顔を見ると吐き気がする」
『ああ』
「でも臨也のことが気にかかって仕方がない。あいつが死ぬのだけは絶対に嫌だ」
『そうだな』
「こんな風に、頭から離れない人間はあいつだけなんだ。…これを好きと言ってもいいのか?」
静雄の言葉に、セルティはゆっくりと頷いた。
静雄は、なぜだかセルティが笑っているような気がした。
『ああ、いいと思うぞ』
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